Shopify(ショッピファイ)アクセスコントロールアプリ Locksmith を解説(後編)
前編の記事で紹介したように、Locksmithは顧客を特定のグループにセグメント化し、そのセグメントグループに応じたコンテンツを表示できるのが基本的な機能です。限定コンテンツにアクセスするにはログインを必須にして新規顧客には見せないようにしたり、シークレットURLやパスコードを事前に発行して特別なお客様のみにアクセスしてもらうシークレットセールなど柔軟な設定ができるところが素晴らしいアプリです。
今回は、お客様のセグメントごとに別の商品を掲載するのではなく、同じ商品を異なる価格で販売する社員販売のような形での利用方法を紹介します。あらかじめ言っておきますと、量販店型のアパレルのように、社員は全商品一律●%OFFといったことはできません。
これから紹介する内容は下記公式のドキュメントで紹介されている内容をもとに仮想アパレルショップをイメージして設定してみました。
Configuring Locksmith for multiple price levels(https://docs.uselocksmith.com/article/217-configuring-locksmith-for-multiple-price-levels)
公式では「小売/卸売」を例に説明されていますが、「通常販売/社員販売」に置き換えていきたいと思います。
設定方法
コレクションを作成してロックをかける
今回の設定内容をイメージ図にしたものが下記になります。(※ 表示内容は一例です)
それでは、実際に設定していきましょう。
設定① 顧客管理
はじめに、社員の方が社員向けのコンテンツにアクセスする方法を決める必要があります。社販を例にするのであれば、社員向けのコレクションにロックをかけ、シークレットURLを発行してリンクを知ってる人だけがアクセスできるようにすればとてもシンプルです。ですが、リンクが外部に漏れる心配や、社員の方が通常販売のページにアクセスした時に混乱が生じる恐れがあります。そのため上図のように設定を行っていきます。
まずは顧客管理で社員を通常の顧客と区別します。社員を一括で登録して、招待メールからパスワードを設定してログインできるようにします。
1. アプリの管理画面下部から「Import customers」リンクをクリックします。
2. 「Customers」画面で赤枠部分を入力・設定します。
Customer tagsに「社員」とつけて通常の顧客と区別しておきます。登録完了後、顧客管理メニューから確認すると以下のようにタグがついているはずです。
登録する人数が多い場合や、メールアドレスだけでなく顧客名などあらかじめ設定しておきたい場合は「Add customers from CSV」からCSVをインポートすることをおすすめします。CSVのテンプレートは下記リンクからダウンロード可能です。
https://help.shopify.com/ja/manual/customers/import-export-customers#csv
ただし、そのままインポートすると日本語が文字化けするので、その場合は以下のことを試してください。保存したcustomer_template.csvをメモ帳で開きます。「名前をつけて保存」を選び、下記図の文字コードを"ANSI"ではなく"UTF-8"を選んで保存し直します。
これで顧客管理の設定は完了です。次はコレクションの設定に進みます。
設定② 商品を複製してコレクションを作成
次の手順で設定をしていきます。
1. 社員販売する商品を複製
2. 複製した商品に「社販」とタグ付けし、タグ付けした商品のコレクションを作成
ここではコレクションのタイトルは「社員販売」としています。
3. Locksmithを開き、先ほど作成したコレクションにロックをかける
4. ロックしたコレクションにアクセスするためのキーを設定
"Permit if the customer is tagged with..." を選択し、「社員」というタグがついている顧客にアクセスを許可します。
これで社員販売のコレクションにアクセスできるのは「社員」とタグのついた顧客だけになります。ですが、これだけでは少し不十分なところがあります。通常販売のコレクションは誰でもアクセスできる状態なので、社員の方が誤って通常価格で購入してしまう可能性があります。そのため、同じ手順で通常販売のコレクションにもロックをかけてそれを防ぎたいと思います。
1. 社員販売以外のすべての商品をカバーするコレクションを作成
2. 作成したコレクションにロックをかける
3. ロックしたコレクションにアクセスするためのキーを設定
先ほどと同じ"Permit if the customer is tagged with..." を選択し、「Invert」(反転)オプションにチェックを入れます。そうすれば「社員」とタグのついている顧客以外がアクセスできるようになります。
最終的に下図のように2つのロックが設定されている状態で完成です。
顧客ステータスに応じた表示
「https://● ● ●.myshopify.com/collections/all」 にアクセスした場合は、ログイン状態、かつタグ付けされているかによって表示内容が下図のようになります。
「https://● ● ●.myshopify.com/collections/社員販売」にアクセスした場合は、ログイン画面が表示されます。
ログイン後、社員タグのついていない顧客だった場合は下図のようにメッセージが表示されます。
表示するメッセージはキーを設定する画面の「Messages」から編集が可能です。
補足
商品の複製
Locksmith自体は商品を複製することはできません。このフローは手動で行う必要があります。
① 商品数が少ない場合
商品管理メニューから「複製」機能を使います。
② 商品数が多い場合
商品管理メニューからエクスポート機能を使ってファイルを編集します。
注意:必ず商品のバックアップを取っておいてください。万が一に備えコピーを別の場所に保存することをおすすめします。
STEP1:商品をCSVにしてエクスポートします
STEP2:価格と商品名を変更します
商品名は一覧で簡単に識別できるように変更することをおすすめします。必要に応じてこれらの商品に一括でタグをつけることもできます。
STEP3:編集したデータを保存して商品管理にインポートします
最後に
「通常販売/社員販売」を例に説明しましたが、「卸売/小売」や「国内/国外」など他のパターンに置き換えてもらうことももちろん可能です。一般消費者向けのチャンネルと別々に用意する必要がないという点は一番のメリットだと感じました。しかしながら、いくつかの課題もあります。公式ドキュメントにも書かれていましたが、他のアプリとの互換性に注意する必要があります。今回テストしたストアにはLocksmith以外にレコメンドアプリがインストールされている状態でした。商品詳細やカートページにおすすめ商品を表示しているのですが、通常販売と社員販売の商品が混在して表示されてしまいました。これではアクセスをコントロールできているとは言えないため、この問題を解決できるのかについてはより詳細に調べて行く必要があります。また、商品を複製しているので在庫管理の方法を決めておく必要があったり、商品やコレクションがたくさんある場合には管理が煩雑になる可能性が考えられます。
今回のようにコレクション(商品)にロックをかけるケースでは他アプリとの互換性が課題に挙がりましたが、基本となる「ロック」と「キー」の機能は非常に優れていて、操作も直感的にできて使い勝手はとても良かったです。Locksmithはドキュメントが充実しており、2本の記事に分けて紹介しました。ぜひ前編の記事も読んでいただき、導入時の参考になれば幸いです。