ECに翌日配送は必要なのか?ゆっくりな配送オプションのニーズはいかに
2024年問題により、配送各社が翌日配送となる基準を見直しています。また、大手ECモールでは、配送を急がない代わりにオトクになるサービスの検討や導入が進んでいます。果たして、消費者の翌日配送ニーズはどれだけあるのでしょうか。
2024年問題スタート、翌日配送の現状
翌日配送はもう限界?
ここ数年で、多くのECサイトが翌日配送を謳うようになりました。今や、”注文した翌日に商品を受け取る”のは、消費者にとって当たり前のことと言えるでしょう。
しかし昨今、ドライバー不足とEC市場の急拡大による配送量増加で翌日配送が難しい状況となってきました。 そして、2024年問題がやってきた現在、ドライバーの労働時間制限により、翌日配送の荷物でも、お約束の日時にお届けすることが難しいケースが増加しているようです。
配送遅延に対する消費者の声
ソーシャルメディアX上には、数年前と比較し配送予定日を過ぎても荷物が届かないといった投稿が目立つようになりました。
(消費者の声)
”輸送業者の人手不足と2024年問題のせいか配送の遅延が多い”
”翌日配送してくれる有料のお急ぎ便を使用したのに遅延された”
”2024年問題の影響か荷物の遅れがもう既に発生していて、慢性的になっている”
”翌日配送をうたって注文受けるのはもう終わりにした方がよいのでは”
”2024年問題のせいなのか、通販で買ったスニーカーがいつまでも届かない”
”商品が、届かない… 2024年問題のせいか?”
このように、2024年問題が広く認知され、配送遅延に関して消費者の一定の理解はあるものの、サービス自体の在り方に疑問も上がっているようです。
翌日配送は本当に必要なのか?
配送を急がないオプションのニーズ
MMDLabo株式会社が実施した調査によると、ECサイト購入経験者4,211人の内、配送を急がない人向けオプションの利用意向は87.1%と高い結果になったと発表しています。また、性別・年代別でみると、利用意向は女性10代(93.8%)が最も高い結果となっています。
※配送を急がない人向けオプション:配送業者の負担削減を目的として、商品が発送後3~5営業日に届くが利用するとポイント還元があるなど。通常では発送から1~2営業日で届く商品と仮定。
引用元:MMD研究所・ECサイトの配送とクイックコマースに関する調査
EC各社の取り組みと消費者の反応-- 楽天市場、Yahoo!ショッピング、ZOZOTOWN
各社が導入/導入検討している、荷物の配達を急がないサービスとソーシャルメディアXに投稿されている消費者の反応をまとめました。
楽天市場
取り組み内容 |
消費者の反応 |
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セール期間中に配達日を通常より遅らせる利用者に、楽天ポイントを付与する「急がない便」の導入検討 |
”急がない便、早急に実装して欲しい” ”急ぐ必要のないものは運送業者側に負担のかからないプランは大賛成 ” ”1日2日なら余分に待ってポイントが貰えるならとてもラッキー” ”本当にすぐ欲しいものなんて、そうそうないからユーザーとして大歓迎” ”これは大事な対策の一つです ※国がポイントなどを支援すべし” |
ZOZOTOWN
取り組み内容 |
消費者の反応 |
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通常配送よりも余裕をもった「ゆっくり配送」を試験導入(実施期間2024/4/2-2024/4/22)) |
"試験導入は結構良かった" "ポイント付くならまた頼んでもいいな〜" "発送準備中から全然進む気配が無い" "思ってたより遅いのでもうしないかな、、" "本当にゆっくりで何買ったか忘れた" "受け取りの予定が立たなくてちょっと大変だった" |
Yahoo!ショッピング
取り組み内容 |
消費者の反応 |
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利用者が余裕のあるお届け日を指定すること「PayPayポイント」がもらえる「おトク指定便」を導入 |
”いい試みだから、楽天やAmazonも対応してほしい” ”配送会社にもユーザーにもみんなにやさしい神サービス” ”特別急がない物だったら節約になるかな” |
消費者のニーズに沿った選択肢の用意
自分事化が進む2024年問題
各ECサイトの取り組みに対して、消費者からは「すぐに必要な物以外は翌日配送ではなくても良い」という肯定的な意見が目立ちます。
しかしながら、消費者が想定していたよりも遅い配送だと、極端に CX(カスタマーエクスペリエンス)が低下している印象です。
翌日配送である必要はないけれど、注文から3日前後では届けて欲しいというのが本音で、それよりも遅いと荷物がきちんと届くのか不安を感じることもあるようです。
また、注文状況をサイト上で確認した際に、”発送準備中”から何日もステータスが動かないと不安になるという声もあります。”ゆっくりな配送にしたのは、配送ドライバーの負担軽減を考えてのことだから発送準備は通常通りすぐにやってほしい”という意見まで出ています。
このような配送に関する声が増えているのは、2024年問題の認知が広まっただけでなく、直面している問題に対して消費者も「自分ができること」を考えるようになってきたからではないでしょうか。
求められる配送オプション
急がない便などのニーズも一定数あるものの、株式会社ネオマーケティングが実施した調査結果によると「ECショップを選ぶ際に重要だと思う要素」に、70%以上の方が発送の早さを選択しています。
引用元:全国の20歳~69歳の男女1000人に聞いた「送料設定や画像、ユーザーが求めるECとは」
また、「配送スピードが消費行動に影響を与える」とも言われており、各ECサイトでは即日発送のサービス廃止に踏み切れません。急がない注文への配送オプションを導入/導入検討する一方で、急ぐ注文へは翌日配送エリアを拡大するなどの動きもあるのです。
急ぐ注文は追加料金で翌日配送を可能に、急がない注文はポイント付与でゆっくりな配送など、ECサイトには、消費者のニーズに寄り添いながらも社会が直面している課題解決への取り組みが求められています。
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