Amazon、楽天市場など各ECモールの2024年問題対策
ついに2024年問題が始まりました。この影響で、配送各社が配送費の値上げを発表し、EC事業者にとって物流コストの負担が大きな課題となっています。今回は、楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングなど各ECモールの2024年問題への対応をご紹介します。
ついに始まった2024年問題
相次ぐ配送料値上げ
2024年問題とは、働き方改革法案によりドライバーの労働時間に上限が課されることで生じる問題の総称です。 2019年4月1日より順次施行されましたが、上限適用まで5年の猶予が設けられ、「人手不足の解消」や「ビジネスモデルの見直し」を求められていました。そして、2024年4月1日、ついに上限適用の日を迎えたのです。この影響で、配送各社は続々と、宅配便の値上げに踏み切りました。
EC事業者に与える影響とは
2024年問題が物流・運送業界に大きな影響を与えていることはもちろんのこと、EC業界が受ける影響も甚大です。実際に想定できる影響としては、物流コストの増加と配送サービスの低下があげられます。
物流コスト増加
- 配送費が高くなり収益が悪化する
- 商品の価格や送料の値上げなどの対応を迫られる(顧客離れのリスク)
配送サービスの低下
- 配送リードタイムが長くなる
- 翌日配送や日時指定が難しくなる(CX低下のリスク)
このように、2024年問題はEC事業者に大きな影響を及ぼします。そのためEC事業者は、物流全体の見直しにより、利益の確保と顧客満足度の低下を防ぐ対策が必要です。
2024年問題、各ECモールの動きは?
Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング、ZOZOTOWN
各ECモールでも、配送各社の送料値上げや物流業界の人手不足の課題へ対策を打ち出しています。
Amazon
1 |
送料が無料になる金額を2,000円から3,500円に引き上げることを発表 2022年3月29日以降に適用 |
2 |
Amazonプライムの年会費を4900円から5900円に引き上げることを発表(2023年8月以降適用) |
3 |
各地域にデリバリーステーションと呼ばれる小型拠点を設置 専門の配送業者や個人事業主に配送を委託することで、密集エリアにおける配送をAmazon側が自らコントロールし、効率的な配送計画の立案や置き配の対応などを可能にする |
4 |
「Key for Business」の導入により物流の効率化を目指す Amazonから委託された配送員が 、Amazonの配送専用アプリを使用することで集合住宅のオートロックを解除できるシステム これにより、不在時の持ち帰り負担軽減と置き配の利用率向上が期待される |
5 |
「AmazonHubデリバリーパートナープログラム」を立ち上げ 商店オーナーが空き時間にご近所に 直接商品を配送するプログラムで、 大都市圏を中心に展開している 万が一、商店オーナーが配送できない場合は、配送業務を委託する配送業者「デリバリーサービスプロバイダー」が代わりに配送する |
楽天市場
1 |
セール期間中に配達日を通常より遅らせる利用者に楽天ポイントを付与する「急がない便」の導入を検討 これにより、配達が集中する問題を分散させ、配達業者の負担軽減を目指す |
2 |
希望配達日を指定しない利用者へのポイント付与の実験をした結果、参加者が通常の3.5倍に増加 ネット通販の利用が広まる一方で、配達業者への負担も意識され始めており、急がない人向けの配送オプションへの高い関心があることが明らかとなった |
3 |
配送品質向上制度を導入し、楽天市場で出店する事業者にも配送品質の向上に努めるよう新たな仕組みを設ける予定(2024年7月開始予定) |
Yahoo!ショッピング
1 |
利用者が余裕のあるお届け日を指定することで「PayPayポイント」がもらえる「おトク指定便」を導入 利用者が急がない荷物の配達日を指定することで、出荷・配送業務の分散を図る |
2 |
出店ストア側は任意で「おトク指定便」の提供有無を設定できる 最短お届け日より余裕のあるお届け日指定(最大14日後)に対して、ストアが任意で1~100円相当の付与ポイントの設定が可能 この取り組みは、物流の安定確保や効率化、再配達の削減によるCO2削減を目指す |
3 |
「早く受け取りたい方は早く受け取れて、急いでいない方はゆっくり、おトクに受け取れる」といった様々な配送ニーズに対応し、購入体験、配送体験の向上を図る |
ZOZOTOWN
1 |
2024年4月1日正午受注分から、送料を250円から330円に引き上げ |
2 |
利用者が注文をキャンセルできる条件についても厳格化 予約品や受注生産品のキャンセル可能条件は注文後24時間以内から60分以内に短縮 発送準備中はいつでもキャンセルできた予約品や受注生産品以外の商品のキャンセル可能条件も、発送準備中かつ注文後60分以内に変更 |
3 |
注文~発送までの時間を通常発送よりもあえて遅くする「ゆっくり配送」のサービスの試験導入(2024年4月2日~22日のみ実施 ) 通常配送よりも長い期間を空けての配送を選択した際に、次回以降の買い物で利用できるZOZOポイントを付与する |
2024年問題、消費者の反応は?
消費者の本音はいかに
EC事業支援のアートトレーディング株式会社が全国の男女20代~90代の合計1000人を対象に実施したECサイト活用の意識調査では、「送料無料」「商品数」「配達スピード」は消費者の満足度につながる重要な項目であることが分かりました。
また、物流2024年問題による影響について、不安に感じていることは、「送料が高くなること」、「送料無料が撤廃されること」、「不在時の再配達料がかかること」といった料金に関する回答が上位を占める結果になったとのことです。
一方で、ディーエムソリューションズ株式会社が、全国の20-60代のECヘビーユーザー男女500名に実施した「物流2024年問題に関する消費者意識調査」では、商品価格や届くまでの日数に影響が出ることに対して肯定的な意見が約7割という結果でした。さらに、5%までの価格転嫁であれば2人に1人が受容という結果が発表されています。
消費者も少しずつ意識するようになった2024年問題。この2024年問題を乗り越えるには、物流事業者だけでなく、物流に関わるすべての方の協力と理解が必要です。そして消費者もその一員であることは言うまでもありません。
だからこそ「安さ・速さ」だけでない配送オプションを提供することで、消費者の理解と協力を得ることが、EC事業者に求められているのではないでしょうか。
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