ECバックオフィス業務をRPAで自動化!導入プロセスをご紹介します
運用や作業が多岐に渡るECバックオフィスの業務。だからこそ、RPAによる効率化が期待できます。RPAとは「Robotic Process Automation」の略語で、パソコンを使った事務作業を自動化できる技術のことです。今回はトランスコスモスのフルフィルメントセンター(ECワンストップセンター北柏)でのRPA導入プロセスや課題についてご紹介します。
目次[非表示]
RPA導入前の課題
DX化に期待できること
ECバックオフィス領域の業務では、お客様企業とエンドユーザーのご要望に応えるために、どうしても複雑な運用になったり、状況による判断が求められるシーンが多くなります。
一案件で複数のシステム・ツールに跨った作業や案件固有のデータ加工作業も多く、Excelマクロ構築やシステム改修によるコスト改善に限界がありました。
また、人件費の高騰や採用の売り手市場化も見据え、今後展開していく多様なサービスに対応するために、新規採用ではなく既存体制のスキルを強化し、DX化への取り組みを通して省人化や新たなサービスの創出を図りたいと考えました。
なぜRPAの導入を検討したのか
RPAで実現できることとは
様々なツールやシステムを跨って操作することができるRPAであればECバックオフィス領域の自動化が可能なのではと考え、導入を検討しました。
また、専用システムの構築や既存システムの改修には、要件を固めるまでの時間やコストが必要となりますが、RPAは実際の作業者や案件管理者のレベルで構築、保守ができ、低コスト且つスピーディに運用可能になるため、導入により様々な改善が図れると考えました。
RPA導入プロセス
重要なツール選定
導入した場合にRPAによる自動化が見込める業務とその実行予定時間、期待できる削減効果について洗い出しを行います。どのような特性があるのかや、どの程度の費用感のツールが現実的なのかを整理した上でツール選定を始めました。
すでに当社の様々な拠点でRPAの導入実績があったため、先ずは社内で広く使用されているRPAツールも候補に入れました。しかし、業務規模感や業務特性を加味し、社内での導入実績に関わらず、より最適なツールを検討していくことにしました。
社内での情報交換や、ウェブサイトでの調査、ウェビナーや展示会への参加を通し、3つの候補に絞りトライアルを実施しました。構築や保守にかかるであろう稼働時間も確認しながら、最終的に学習環境や画面の使いやすさ等で高評価となったRPAツールを採用することになりました。
RPA導入後の課題とその解決策
ケース①好きな時間に実行できない問題
導入検討段階で洗い出した自動化可能な業務の内容やボリューム感を踏まえ、デスクトップ型のRPAツールを導入しています。また、複数案件の作業を行い1ライセンスあたりの稼働率を上げるために、個人端末へインストールするのではなく、RPA専用端末を用意し運用しています。
導入当初はWindows搭載のタスクスケジューラ機能を使用し、作成したシナリオが決まった時間に実行されるよう設定していました。しかし、前工程の完了時間のばらつきにより実行タイミングが定まらない作業について課題が出ました。そのため、前工程の作業を担う人間側が、RPAの実行時間に間に合うよう優先順位を組み替えて作業を行ったり、RPAに頼らず引き続き人間による作業を行っていました。
もちろん人の手でRPAの実行ボタンを押すことも可能です。しかし、都度RPA専用端末へアクセスし実行ボタンを押す必要が出てきてしまうことや、シナリオが増えるにつれ様々な案件の担当者がRPA専用端末を使用することになるため、セキュリティリスクの観点からもタスクスケジューラ機能を使用した実行方法しか対応していませんでした。
この課題をクリアにするために、”特定のフォルダへファイルが格納されることでシナリオが動き出す”という仕組みを作りました。
特定のフォルダを監視するシナリオを構築し、実行したいRPAシナリオのタイトルをファイル名にしたtxtファイルをそのフォルダへ格納することで、該当のシナリオが実行されるというものです。
これにより、各案件担当者が個人端末からシナリオを動かすことが可能になりました。
ケース②エラー通知問題
作業開始時と終了時には、Slackへ通知を送るWebhookの設定をシナリオに入れています。
もちろん、エラー発生時にも通知を送らせることは可能です。しかしその設定では、エラー検知時に通知を送るケースと同じフローに遷移してしまうのです。
たとえばPC側のレスポンスが遅いことが原因で発生したエラーのように、エラーポップアップを閉じて「実行ボタン」を押すだけで解消する場面でも、エラーになった箇所から作業を再開させることができません。そのため、エラー通知は行っていませんでした。
しかしながら、エラー発生時に気付くことが出来ずに対処が遅くなり、次のシナリオ実行に影響が出てしまうことが度々発生してしまいました。そこで改めて、例外フローに遷移せずに通知を飛ばす方法について模索しました。
調べていく中で、シナリオのつくり方を工夫することで、例外フローに遷移した後も元の処理に戻れることがわかりました。これに対して、既に動いているシナリオを極力作り直すことなくエラー通知を飛ばす手段として、RPAとVBAを組み合わせた方法を考案しました。
開始時と終了時、エクセルにそれぞれの時間を書き込むようにし、もし一定時間経過しても終了時間が書き込まれなかったらエラー通知を飛ばすという仕組みです。
シナリオの冒頭と末尾にエクセルを更新するフローを追加する必要がありますが、シナリオの修正範囲が少ないためこの方法を採用することにしました。これにより、クイックなエラー対応が可能となりました。
RPA導入効果と今後の課題
メンバーのスキル向上とシナリオのブラッシュアップ
監視シナリオもエラー通知も現在は検証段階で、それぞれ仕組みの見直しを行いながら実装シナリオを増やしています。
導入プロジェクト立ち上げ時は、VBA含めプログラミングができないメンバーしかいませんでしたが、それぞれが実践を通してシナリオ構築をする力を養ってきました。更に、メンバーの増強によりVBAとの合わせ技もできるようになり、導入当初より出来ることが増えてきていると感じています。しかしまだまだ課題もあり、今の形態が完成形ではないと思っています。
導入の過程において発生していなかった工程で、エラーが出て止まってしまうなどの課題もあります。トライ&エラーを繰り返しながら、実践で得た経験やノウハウを活かし、シナリオのブラッシュアップを行うことで、更なる効率化を模索しています。
現在は、システムから実績データを ダウンロードするような単純なものから、報告資料作成やシステム取込用データ作成のためのExcel加工、受注データ作成作業など約30シナリオが稼働しています。
RPAを効果的に活用することで自動化・効率化を進めていき、人手に頼らない効率的なシステムの開発を進めることが、更なるビジネスの拡大につながると考えています。
(関連記事)EC物流バックオフィス業務のDX化/RPA導入のポイント