
日本の「小売業」の展望を、事例を交えて解説
2023年より小売業は、コロナ前の2019年に対して販売額が6.8%増。時代は「アフターコロナ」へ移行したと言われています。その間の大きな変化として挙げられるのは、やはりコロナ禍によるデジタル化の進展。それにより、消費者の購買行動は大きな変化を遂げています。
今回は、日本の「小売業」の展望について解説します。
小売業、期待される進化
日本の小売業界は、オンラインショッピングやモバイル決済の普及により、従来の小売業の仕組みやビジネスモデルから大きく進化しています。
コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどの小売店舗も、スマートフォンやIoT技術を活用した便利なショッピング体験を展開。店内のデジタル化やオムニチャネル戦略の導入により、顧客体験の向上に成功しています。
さらに、AIを活用したパーソナライズドサービスの導入が進展し、個々の顧客に最適な商品提案が可能になりました。
デジタル化により在庫管理や物流の効率化が図られ、コスト削減や環境負荷の軽減にも寄与しています。
今後はオンライン接客だけでなく 、実店舗の回帰によりオフラインへの対応も求められています。ショールーミング化店舗・EC購入の店舗受け取りなど、新たなEC事業への投資が今後の小売業を左右する見通しです。
小売業、今後の課題
一方で、日本の小売業界には多くの課題が存在しています。
物流問題や物価高、人口減少や高齢化による消費者の減少、都市部と地方の経済格差の拡大による地方の小売店の苦戦、これらが課題の要因として挙げられます。
さらに、デジタル化に伴いセキュリティリスクが増大し、顧客情報の漏洩やサイバー攻撃への対策が求められます。
これらの課題には、より柔軟に対応できるビジネス戦略と持続可能な成長への取り組みが必要です。
大手の「マーケットプレイス化」がトレンドに
2024年の小売業の動向としては、大手小売り企業が自社サイトを拡張し「マーケットプレイス化」を実施した企業が多く見られました。背景として、Amazon等のECプラットフォーマーとの競争が挙げられます、独自の集客力や商品力、事業領域を増強することで、LTV向上やロイヤルカスタマーの育成に注力したことが見受けられます。
消費者の動向も、1世帯当たりの通販サイト月平均支出額は2018年の12,610円から2023年には20,753円と5年間で約1.6倍に増加(※)。世界規模で見ると、マーケットプレイス機能を備えた通販サイトは、2021年に前年比の約2倍にも成長しています。
※経済産業省:「令和5年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」より
大手3社の「マーケットプレイス化」事例
ニトリ
品ぞろえの充実を図り、「暮らし」にフォーカスした目的特化型のプラットフォームを作成。
家具やホームファッション、家電といった現在扱っているカテゴリーに加え、食材・製菓・消耗品・介護用品・ペットフード・美術品などを手がける企業の参加を促しています。
それには、巨大プラットフォーマーに対抗するのではなく、あくまでも「暮らし」に特化したポータルを目指す狙いがあります。
アイリスプラザ
商品点数50,000点以上・会員数は400万人に達するマーケットプライスを確立。取り扱うカテゴリや商品数・サービス・ポイント活用が拡大し、利用者の利便性が向上しました。「お客様の声」を活用することでコンセプトの「生活者の不満や不便を解決するモノづくり」を加速し、より良い商品開発に繋げる狙いがあります。
アダストリア
実店舗とECで30以上のファッションブランドを展開。参加企業との連携強化を図るため、ライブ配信を実施しました。そして24年10月、参加企業が手がけるポップアップストアをOMO型店舗「アンドエスティストア」へとリブランディングしました。
ECを活かして課題をクリアに
以上、大手小売企業の「マーケットプレイス化」をみると、小売業の抱える課題解決にECは有力な手段となり得ます。
ECの利用により、地方に住む消費者に都市部の同様な商品やサービスを提供でき、経済格差の縮小が期待されます。
また、ECプラットフォームを活用することで、小売業者はリアルタイムで在庫管理や販売データの把握が可能になり、より効率的な運営を実現します。
さらに、顧客データの統合や分析を通じて個々の顧客に最適なサービスを提供することができ、顧客満足度の向上に寄与します。
日本の小売業界は、ECの活用とデジタル技術の導入によって、課題を乗り越えながら持続可能な成長を遂げることができると考えられます。
トランスコスモスは、クライアントが抱える課題解決を通じ、エンドユーザーにとってより豊かな購買体験に繋がる「EC事業支援サービス」を提供してまいります。