【発送代行】EC物流コストの削減方法と効果
最低賃金の見直しが定期的に行われる昨今、物流倉庫での作業効率化は大きな課題となっています。ECでは利益に大きな影響を与える物流コストですが、物量が下がればもちろんのこと、たとえ上がったとしても、「コスト削減」を求めている企業は多いです。
「コスト削減」、一見ネガティブに聞こえ、時には現場に重くのしかかるこの言葉。
しかし、作業スタッフが多ければ多いほど、物流が多ければ多いほど、作業効率改善が何百万、何千万円のコスト削減に繋がることもあります。また、それは単なるコスト改善ではなく、チームにとってポジティブな心理と環境をもたらしてくれるのです。
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物流倉庫における作業コストの削減
ポイントは作業導線
コスト削減の中で一番改善しやすく効果が大きいのは作業コストの削減です。一番シンプルな改善は各作業工程毎に無駄な工程を省くことです。
【事例】レイアウトとロケーション移動によるピッキング導線の改善
改善方法① 検品作業場と商品棚の距離を短くする
ピックした商品を検品して梱包しますが、商品棚と検品作業場の距離が遠いと、それだけ歩く距離が多くなります。そのため、歩く距離を短くするだけで劇的に作業時間が変わるのです。
改善方法② 出荷頻度が高い商品を検品作業場に近い位置に移動する
基本的には①と同じ原理です。倉庫内に複数設置されている商品を保管の棚と作業場の位置の工夫です。商品の種類が多ければ多いほど、棚間の移動も増えます。そのため、出荷頻度の高い商品を検品作業場に近い棚に保管することにより移動距離が短くなります。
上記事例は、作業時の歩行距離を短くしただけです。しかし、この方法を実践するだけでどれだけの費用対効果が出るか想像できますか。
人間が1m歩くのに必要な秒数は、平均で1.5秒程と言われています。
この改善で10mの歩行距離が短縮できたとしましょう。1ヵ月10万件出荷する倉庫を想定し、どのくらいの効果があるかを算出してみます。
- 1箱10m歩行距離の改善をするということは、時間にして15秒の改善とイコールになります。(1m:1.5秒 → 10m:15秒)
- 10万件/月の出荷なので削減可能な工数は、15秒/箱×100,000箱=1,500,000秒となります。つまり約417時間の改善が可能です。
- そして、作業員の時給単価を1,800円で換算すると、1,800円×417時間=750,000円/月となり、9,000,000円/年の削減が可能となります。
なんと、歩く距離を短くしただけで、年間で900万円の改善効果があると予測できるのです。
求められる全体最適化
まずは意識することから
しかし、実際は改善効果を出すには、上記のように単純にはいきません。なぜならば、一つの工程だけ改善しても、後の工程が改善した生産力に追いつかなければ結果詰まってしまうからです。
本来であれば各工程ごとに生産性を出し、一番生産力が低い工程の改善を行い、全工程で同じ生産力を維持できるように改善していきます。いわゆる「全体最適化」です。
しかしながら、1箱出荷に掛かる時間を10秒改善するだけで大きな改善効果があるということを意識することがとても重要なのです。
意識を持つことで、現場全体での改善を繰り返していけば、それが例え秒単位の改善であっても、年間で大きな工数削減が可能になるのです。そして、それはコストメリットだけではなく、業務環境の改善により従業員の職場環境における満足度向上やパフォーマンス向上にも繋がります。
長引く物価高騰への対策とは
EC事業者の利益拡大のためにできること
新型コロナウィルス、ロシアのウクライナ侵攻の影響で半導体不足、原油価格の高騰、為替の変動で輸入依存の日本は大幅な物価高に見舞われました。物流業界も例外ではなく、大きな部分では資材、消耗品が大きな値上げが起こりました。
値上げした資材例
- 段ボール資材:平均20%の値上げ
- 作業で使うテープ類:平均15~20%の値上げ
- 緩衝材:10%の値上げ
資材の高騰は、物流コストにダイレクトに響きます。そして、物流コスト高騰は、EC事業者が利益を確保する上で決して無視できない大きな問題です。
現在のような厳しい状況の中、3PL(発送代行)の企業には、業務自体の改善と付加サービスの創出により、EC事業者の利益拡大に寄与していくことが求められます。
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