顧客満足度を向上させるEC物流品質管理の取り組み
高品質なEC物流倉庫(フルフィルメントセンター)であるために、トランスコスモスが実践している品質保証への取り組み、「稼働判定」についてご説明します。
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EC物流倉庫における品質向上の取り組みノウハウを公開
高品質なEC物流倉庫であるためにやるべきこと
トランスコスモスでは、物流品質を高めるために、物流倉庫内に品質管理担当者をアサインし、様々な施策を実施しています。その一つとして、「稼働判定」という取り組みを行っています。
稼働判定とは?
実施目的 |
新規案件立上げ時における準備基準を制定、ルール化し、稼働合否の判断を下す仕組みを整備することで、稼働後のサービス品質を担保することを目指す |
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実施方法 |
案件構築および運用担当者に対して事前に判定リストを配布した上で、品質課にて実態調査・ヒアリングを実施 |
判定日 |
第1回:案件サービスイン3営業日前
第2回:案件サービスイン5営業日後
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判定者 |
センター課(品質管理担当) |
チェック方法 |
①現場ヒアリングを通して、マニュアル・フローの内容に則った 作業構築が実施されているかチェック
②現物確認を通して、運用ツール・備品・帳票が準備されているかチェック
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合否判定基準 |
事前に設けた合否ボーダーラインに対して、評価判定結果が未達の場合には、センター長へのエスカレーションおよび関係各所へフィードバックを行う |
トラブルゼロで物流代行業務をスタートするための準備とは
サービス構築の全工程に関するチェック項目
稼働判定では、要件定義、社内処理業務、お客様企業との取決め事項、フローやマニュアルなど、サービス構築時に必要なタスクが適切に対応できているかのチェックや、入荷~出荷までの業務工程における運用チェック、棚卸や廃棄に関するチェックなど、物流業務の全工程においてチェック項目を設けています。(案件毎に若干異なります)
新規案件の稼働が開始する前に、必要な情報、ツール、環境の可視化と、稼働後においての不安要素排除のために必要な工程を全てチェックし、トランスコスモスがお任せいただく全ての物流代行案件に関して、トラブルゼロでサービス提供開始することを目指しています。
下記が、チェック項目の一例です。(実際は全部で70前後のチェック項目があります。)
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工程 |
チェック項目 |
1 |
全体 |
ローンチおよび運用稼働日(長期休暇GW/SW・年末年始対応他)、稼働時間は決まっているか。 |
2 |
運用体制図(構築・運用フェーズ共に)あるか。 |
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3 |
全体相関フロー図(場所・システム・物)の動き流れが決まっているか。 |
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4 |
業務要件定義書は確定し、関係各所と共有しているか。 ※出荷件数フォーキャスト・出荷キャパ・梱包サイズ等確定しているか。 |
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5 |
ローンチ後各工程におけるのエスカレーションルート・ツールは決まっているか。 |
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6 |
運用スルーテストの外結・内結は完了し、問題なく連携できているか。 また、作業者の案件用アカウントは発行されているか。 |
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7 |
取り扱い商品は決定しており、北柏倉庫保管環境に適正であるか (温湿度・賞味期限・消費期限・ロット・金券など) |
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8 |
各工程(入荷~メーカー返送)までの各種業務フローはできているか。 |
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9 |
各工程(入荷~メーカー返送)までの各種作業マニュアルはできているか。 |
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10 |
入荷 |
初回入荷日の確定および、入荷予定表は要件定義のリードタイム内に受領できているか。 |
11 |
入荷時B品が発生した場合、判定基準に則り、入荷検品作業者にて判断・エスカレーションできるようになっているか。 |
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12 |
入荷検品表の連携ができる状態になっているか。(引き出し・看板等) |
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13 |
棚入れ/
保管
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棚入・保管ルール(エリア・レイアウト・在庫キャパ・ロケーション・看板・担当)は決まっていて、現場設営できているか。 |
14 |
SLAに則った保管環境を構築できているか。 |
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15 |
受注 |
受注データの締め時間と決済処理とのタイムラグが考慮されているか。 |
16 |
住所不備の対応可能のためのエスカレ用連携ファイル・ツール・アカウントの準備ができているか。 |
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17 |
出荷指示 |
出荷指示のリードタイムは、出荷リミット時間に影響なく出力・連携できる状態か。 |
18 |
出荷キャパを超えた場合のコントロール運用はあるか。 |
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19 |
クライアント特有の作業はあるか。 ある場合には、作業指示書の準備(テンプレート等)はできているか。 |
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20 |
伝票発行 |
伝票発行のタイムスケジュールおよび作業担当者は決まっているか。 |
21 |
伝票発行エラーが発生した場合、作業担当者は対処方法を理解し、作業ができているか。 |
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22 |
伝票発行時に加工指示書の出力はあるか。 ある場合は、ルールに則った作業フローが構築されているか。 |
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23 |
ピッキング |
オーダーピック案件の場合、台車やピッキング用スペースなど整備されているか |
24 |
トータルピック案件の場合、台車や仕分けスペースなど整備されているか |
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25 |
ピッキング数量間違いや商品ピック間違いがあった場合の対応ルールは決まっていて、作業担当者は手順通りの作業ができるか |
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26 |
出荷検品 |
出荷作業場は、備品やスペース等商材に見合った設営準備がされており、問題なく作業できる状態か。 |
27 |
発送時に同梱物はあるか。同梱漏れが発生しないよう運用構築されているか。 |
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28 |
出荷検品時、数量間違いや商品間違い、汚破損があった場合の対応ルールは決まっていて、作業担当者は手順通りの作業ができるか。 |
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29 |
梱包業務 |
マテハン投入案件であるか、マニュアル梱包案件であるか決まっているか。 |
30 |
使用資材(自社またはクライアント支給)は決まっているか。 |
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31 |
各種商品に応じて、緩衝材の量・ルールは適正で、作業員によってばらつきはないか。 |
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32 |
梱包仕様(商品・納品書・同梱物・緩衝材)の入れ方は決まっているか。 |
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33 |
加工(ギフト・ラッピング)がある場合は、作業スペース・手順は決まっているか。 |
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34 |
実績 |
デイリーでの実績連携はあるか。実績連携のリードタイム・フォーマット・ツール等問題なく連携できるか。 |
35 |
レポート(週次・月次)は、問題なく連携できるか |
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36 |
着荷実績の取得運用はあるか。 |
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37 |
返品 |
ユーザー返品受領の運用はあるか。 |
38 |
着払いの運用があり、現場受け入れ対応・準備はできているか。 |
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39 |
不達返戻品受領の運用はあるか。 |
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40 |
返品受付場所の設営、保管スペース、返品管理簿の連携に問題はないか。 |
参考:物流におけるリードタイムにつて解説記事 https://transcosmos-ecx.jp/blog/fulfillment/47
物流品質向上のための取り組み「稼働判定」の導入効果
物流代行サービス提供開始までタイトなスケジュールでも準備は万全に
トランスコスモスで、稼働判定の取り組みを開始したのは約3年前です。それまでの品質管理の取り組みでは、トラブル発生時にフローやマニュアルを検証していましたが、事前準備に関しては案件担当者に一任し、第三者が品質管理のチェックを行うことはしていませんでした。
また、ローンチまでの構築期間が短い案件も少なく、準備不足でスタートしていたこともあり、いつトラブルが起きてもおかしくない状況が頻発していたのです。
しかし、稼働判定を導入したことにより、準備するためのタスクと期間が明確になり、構築からローンチまでのスケジューリングを適正に行えるようになりました。また、お客様企業にもご理解いただき、トラブルなくサービス提供できる適正の構築期間、サービス開始日を協議にて決定させていただけることも多くなったのです。
現在では、ローンチ3日前には稼働判定の点検が完了しており、判定結果が合格の案件が90%を超えています。不合格の案件に関しては、稼働開始前に改善しないとトラブルに繋がる項目は早急に改善対応し、ローンチまでには全ての案件が合格となるように運用しています。
EC通販における物流品質の重要性
物流代行業務を担う3PL企業の責任
EC通販において、物流品質は顧客満足度に大きく影響します。商品に誤りが無いこと、破損が無いこと、配達希望日に届くことなど、消費者にとって当たり前のことができなかった場合、顧客満足度は大きく下がり、顧客離れが起きかねません。
お客様企業のブランドイメージを守るためにも、物流品質の改善・向上に取り組むことが重要です。
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センター課の課長であり、品質管理のプロフェッショナル・岡崎 雅之の経歴とフルフィルメントサービス部センター課の役割と業務についてご紹介します。